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愛媛県史 地誌Ⅱ(東予西部)(昭和61年12月31日発行)

一 観光の概要

 観光開発

 水軍観光ルートと瀬戸三崎ブルーラインの接点にあたる今治地方は、観光開発には次のような秀れた条件を持っている。
 一、阪神・山陽など人口密集地に近く、海陸の交通の便がよい。
 二、古くから開け、各時代にわだっての史跡、文化財に恵まれている。
 三、海、島、山、瀬戸内海を代表する豊かで広域の風景資源を持つ。
 四、タオル、造船、縫製、商業など、労働集約的産業が発達してきた。
 時間距離の短縮今生活水準の向上で、人々の行動半径が拡大し、自動車型の観光時代を迎え、さらに架橋時代の進行の中で、流通拠点都市としての基盤強化が進められる一方、芸予諸島を一体とした海洋性広域観光、レクリェーション圏の拠点として整備されつつある。
 これについて『今治市誌』は次のように述べている。

 人々の動きが、より早く、より大きなものになると、魅力ある大型観光施設がない限り、今治は通過するだけの町となってしまうことは目にみえている。観光施設造りが、行政、産業、経済、開発、都市計画など全ての地域計画の基本にならなければならない。それが、広い経済圏をもつ今治を中都市から大都市へと発展させる近道であり、今治で働く人々にとっては楽しく、希望と夢のある町ということになる。もちろん、観光施設といってもレジャーばかりでなく、スポーツセンター、博物館、美術館、公園、音楽堂、郷土資料館、キャンプ村、ドリームランドなど健康的で、家族、特に青少年が気軽に楽しめるものでなくてはならない。

この構想のもとに、豊かに、静かに、健康的に、長期的にまた創造的にすごすことのできる拠点づくり、瀬戸内海観光の中央、瀬戸内海大橋の起点となることの認識に立って、全国的スケールの観光基地づくりが必要であるとする。そのために、今治市を中心とした周辺地域(今治地方観光協会には一二市町村が含まれる)のより一層の緊密性を高める。既存の地場産業、味覚、商業との結びつきを強める。マイカー時代、大型観光時代に対応して交通施設づくりにポイントをおくなどを留意した開発姿勢が打ち出された。
 現在今治市では、瀬戸内海国立公園の中部地域に位置する恵まれた自然環境、歴史的風土、更には国際観光資源となる本州四国連絡橋(尾道―今治ルート)を生かしながら、中・四国にわたる広域観光ルートの結節点にふさわしい観光レクリェーション基盤の整備を推進し、併せて観光産業の育成を図ってゆく。また、この際、地場産業のタオルや伝統工芸の漆器等との結びつきを図り、地域産業の発展にも資することをねらった開発を進めている(図2―68)。
 その具体的な方向として、地域の特色に応じた観光レクリェーションゾーンの整備と道路網の整備によるリンクを目指している。
 一、南東部にあたる桜井地区においては、自然海岸と背後の丘陵地の一体的整備、更には新たな温泉開発によって国営公園クラスのマリーンスポーツ・レクリェーションリゾートづくりと滞在型の保養基地づくりを進めている。
 二、北部にあたる来島諸島・糸山・近見山地区においては、天与の景観に架橋のもつ観光性や機動性を、更には伊予水軍城趾等の史跡を生かしながら遊覧型の観光開発を目指している。
 三、中心部にあたる市街地においては、今治城や地場産業振興センターをはじめとする産業・文化施設、更には都市景観形成モデル事業によって整備される町並みのなかで、都市的サービスや地域文化を享受できるゾーンづくりを進めている。
 四、北西部にあたる乃万・日高地区においては、石造文化の里、そして日本在来馬の野間馬を放牧した公園を中心に、古刹や神社との連けいを図りつつ山里観光ゾーンの整備を目指している。 今治市の観光入込客は昭和四八年の一四四万九〇〇〇人をピークに減少をたどり、現在は年によって多少の増減はあるが横ばいの状態である(図2―69、表2―94)。今治地方は夏季利用型の観光地であり、夏季における天候に左右されるところが多い。また今日の観光ニーズの多様化に応えられる観光地も少ないことも原因として考えられる。祭りやイベントと結びついた観光、地域の文化に結びついた観光など多元的、複合的な観光レクリェーションづくりが求められるところである。


 今治地方観光協会

 瀬戸内海国立公園の拡張と整備運動のため、昭和二二年に設立されたもので、市町村の連合体として発足した点は異色である。二五年までは、瀬戸内海国立公園への編入、観光案内板やベンチの設置、絵ハガキ作成などに努力したが、二五年以降は鈍川温泉の復興、近見山・糸山などの観光開発、国鉄周遊地の指定運動、納涼、獅子舞、鯛網などへの観光客の誘致の努力をした。近年は市、商工会議所とともに港まつりを協賛し、島しょ部の交通、観光開発、広域観光、国民休暇村、自然遊歩道や研究路づくり、観光少年団の育成などを行っている。
 事務所は港湾ビル三階にあって、会員は自治体(今治市と朝倉・大西・大三島・上浦・関前・玉川・波方・伯方・宮窪・吉海・弓削の各町村)からなる特別会員と、会社商店中心の会員及び普通会員とからなり、会費は観光地の環境整備や観光客の誘致宣伝、開発調査などに支出されている。


 観光行事

 今治における近年の観光行事は表2―95のとおりで、特に「みなと祭り」が盛大で人出も多い。第二八回今治みなと祭(昭和六〇年度)では次の行事が行われたほか、今治地域地場産業振興センター、今治城周辺、本町おまつり広場、みなとのおまつり広場などにおいて多彩な協賛行事が行われた。
 郷土芸能フェスティバルは、市民及び外来客に伝統芸能である「継獅子」を紹介し、今治市をPRするもので、獅子舞保存会八団体と今治西中学校郷土クラブ及び今治寿太鼓保存会が出演した。
 今治城さつき展、菊花・盆栽展は、市民が余暇を利用して育てた「さつき」・「菊花」・「盆栽」を一堂に集め展示する。それを一般市民の鑑賞に供し、花木に対する認識を深めるとともに、観光資源の一つとして内外に広く宣伝し観光客の誘致を図ることを目的に実施されるもので、今治さつき協会、今治菊花愛好会等が中心となって、さつき約五〇〇点、菊花・盆栽約八〇〇点が展示された。


 観光コース

 今治市産業部観光課では次の四つの観光コースを案内している。

① 今治桟橋(バス3分0・5㎞)→今治城(バス8分1.5㎞)→今治駅前(バス20分3㎞)→近見山ロータリー(徒歩15分0.5㎞)→近見山ロータリー(バス15分3㎞)→浅川(近見山入口)(バス15分4㎞)→波止浜公園入口(徒歩15分0.5㎞)→波止浜公園(徒歩10分0.5㎞)→渡し場(桟橋)(定期渡船15分1.5㎞)→小島(定期渡船15分1.5㎞)→渡し場(バス20分5㎞)→今治駅
② 今治桟橋(フェリー1時間半)→大三島宮浦港(バス5分1㎞)→大山祗神社(バス20分6㎞)→井ノ口港(フェリー20分)→瀬戸田耕三寺(水中翼船35分)→今治港
③ 今治桟橋(バス3分0・5㎞)→今治城(バス8分1.5㎞)→今治駅前(バス25分8㎞)→笠松山登山口(徒歩50分3㎞)→笠松山頂上(徒歩15分1㎞)→世田山頂上(徒歩30分1㎞)→世田薬師前(バス5分1㎞)→蛇越池(徒歩10分1㎞)→東予国民休暇村ひうちなだ荘(徒歩5分0.5㎞)→休暇村入口(バス5分1.5㎞)→志々満原(バス3分0.5㎞)→唐子浜(バス15分4㎞)→今治桟橋
④ 今治桟橋(バス3分0・5㎞)→今治城(バス8分1.5㎞)→今治駅前(バス40分15㎞)→鈍川温泉(徒歩20分2㎞)→玉川ダム(バス40分15㎞)→今治駅前

 さらに次のような観光モデルコースを紹介している。
 史跡めぐりモデルコース 今治港(徒歩10分)→今治城(バス・徒歩50分)→国分寺塔跡他(バス18分)→今治駅(バス15分)→乗禅寺(バス5分)→延命寺(バス10分)→南光坊(バス5分)→今治港
 産業観光モデルコース 今治港(バス20分)→名勝波止浜公園と造船所(バス20分)→縫製工場・厨房工場(バス20分)→タオル工場・シャッターエ場(バス15分)→地場産業振興センター(徒歩10分)→今治港

図2-68 今治市のおもな観光資源

図2-68 今治市のおもな観光資源


図2-69 今治市の観光入込客数の推移

図2-69 今治市の観光入込客数の推移


表2-94 主要観光施設利用状況

表2-94 主要観光施設利用状況


表2-95 今治市の観光ごよみ

表2-95 今治市の観光ごよみ